昨今の地上波バラエティ番組は、コンプラ重視の風潮になんとか抗おうと様々なアイデアを考えている最中。その試行錯誤の過程を我々は楽しんでいるところもあります。「水曜日のダウンタウン」などはその最たる例かと。
また近年の深夜番組に関しては、敢えて歴の浅い若手ディレクターに番組構成を任し、その評価を競うというコンセプトの放送枠も生まれています。特にテレビ朝日系列ではその傾向が強く、『キョコロヒー』『トゲトゲTV』『かまいガチ』といった現在でも続く番組が深夜枠の「バラバラ大作戦」をきっかけに生まれています。
限りある放送枠で、既存のアイデアに捉われない自由な番組を作っていこうというテレビ局のチャレンジ精神が見えてきますね。
そんな最近の深夜放送番組の中で、金属バットの2人がMCとなった『金属バットのダミ声ドキュメンタリー ガラガラGO』は、特に魅力を感じた番組の一つであります。
元々金属バットが好きだというのもあるのですが、2人の雰囲気に番組コンセプトが綺麗にハマっている。今回はこの番組について簡単に紹介いたします。
『金属バットのダミ声ドキュメンタリー ガラガラGO』とは
金属バット初の地上波冠番組となった『金属バットのダミ声ドキュメンタリー ガラガラGO』は、朝日放送の深夜放送枠『ちょいバラトーナメント』内で放送された番組の一つです。
番組構成としては、街にいる「ガラガラ声」の人たちにスタッフがお酒とタバコをご馳走する代わりに、その人たちの人生を紐解いていくロケを展開する、人間ドキュメンタリーを謳った番組です。金属バットの二人がそのロケ映像にツッコミやコメントを入れていくスタイルで番組は展開します。
まず、癖のありそうな一般人を探すための焦点を「ガラガラ声」に絞ったのが素晴らしいところ。喉がガラガラになった理由が何なのか?酒?タバコ?そうなるまでに結構なバックグラウンドがあるのは視聴者も何となく想像は出来る点、そうした人を探す上でわかりやすいポイントではあります。(遺伝とかなら話は別ですが)
15分の試験的番組ながら、内容は非常に濃厚。密着した一般の人の中には、服役経験のある元マグロ漁船員のおっちゃんや、北新地のBARのニューハーフママなど、おおよそゴールデン番組では目にかかれない大阪の訳アリな人たちばかり。
そんな人たちに取材を申し込むと、やはり最初は怪しがられます。しかし、お酒とタバコをおごることを申し出たら、態度を一変させて取材に応じてしまう人もいるあたりは、登場する人たちの素直な人間らしさを感じさせるシーンです。
金属バットとノンフィクションの親和性
この番組で取材した人たちは、上述の通りなかなかにハードな人生を送った方ばかり。
そうした訳アリな人の話を聞き、人生や生き方を追いかけるのは、話の流れによっては「ザ・ノンフィクション」のような考えさせられる内容になりかねません。
その人にただ密着した人間ドキュメンタリーを放送するだけだと、ちょっと見る側も気持ちが落ちてしまうかもしれません。しかし、それを見て暗い気持ちにさせてくれないのがそのロケを見守る金属バットです。
金属バットの二人も大阪堺の下町育ちゆえか、そうした人たちには極端な抵抗を感じず、忌憚のないコメントを続けていきます。
二人の素直なツッコミやコメントが冴えわたっており、特に北新地のBarのママが9万円のシャンパンを開けた際の友保さんの、
「俺の昔の月給やんけ」というコメントは秀逸でした。
酒はともかくタバコまでおごるスタンスは近年のロケ番組ではまぁ見られないですよね。密着相手に必ずタバコの銘柄を聞くなど、そうした番組の構成も金属バットの番組らしいところ。今の若い人は紙タバコ率も減っており、マイルドセブンやセブンスターもピンとこない人が増えているゆえ。
今のコンプラ重視の時代、人気が出ても紙タバコを堂々とテレビでふかせる芸人は千鳥大悟さんと金属バットくらいかもしれません。第4回に登場したミュージシャンのおっちゃんが手巻きタバコを慣れた手付きで巻いている様子に
「めっちゃ早い!「これめちゃくちゃむずいねんから」と二人で驚く様子は見てて笑いました。どれくらいで巻くのが普通なのかも知らない視聴者も多いのに。
そんな感じで金属バットの二人が自然体でロケを見守る様子には魅力を感じます。
最後に密着した人たちがカラオケを歌い、ロケが終わるのですが、その歌がどれも心に染み入る。ダミ声の人が歌う歌ってなんで心にぐってきてしまうんでしょうか。
小林さんは最終回では番組の最後に「音楽は世界を救います」という言葉でこの番組締めくくっています。
ロケで出会った人たちはどれも癖ある人たちばかりですが、普段進んで見ることのない人たちの人生を、金属バットを通して娯楽として届けてくれるというのはすごく新鮮に感じられ、感動します。
まとめ
『金属バットのダミ声ドキュメンタリー ガラガラGO』は、知名度が上がっても、漫才や生き方のスタンスを崩していない金属バットの二人だからこそできる番組だと思います。
Tverの配信は7月9日で終わっていますが、現在実施中の投票の得票率で今後放送が継続するか決まるので、ぜひとも放送が続いてほしいところです。
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