【楽屋ニュース】常識を覆した新王者・令和ロマン!M-1グランプリ2023感想。

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楽屋ニュース(賞レース)
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トップバッターの常識を覆した令和ロマン

M-1グランプリ2023が12月24日に決勝が放送され、見事令和ロマンが結成5年目の最若手ながら優勝を果たしました。

令和ロマンは、ファーストラウンドで笑御籤による出番順ではトップバッターを引くも、若手離れした漫才で会場をいきなり沸かせ、その後の審査員の基準点を大いに悩ませました。ファイナルラウンドでは、さらにパワーアップした漫才で審査員の投票を集め、ヤーレンズ・さや香との決戦の末見事に王者に輝きました。

1回戦から3回戦まで劇場で予選を観劇し、準々決勝・準決勝の配信も全て見た自分からして、年末の風物詩がこれで一段落かぁと思うと胸がいっぱいです。

今回は敗者復活組を含めた、ファイナリスト10組のネタに対して、個人的な思い入れを書きたいと思います。個人的な点数をつけるつもりはありません。

令和ロマン

長年、M-1において論争され続けてきた話題の一つに、「トップバッターが圧倒的不利」というものがあります。

どんな賞レースにも言える話題ですが、M-1ではトップバッターでの優勝を果たしたのが第1回の中川家以外にいないことが示しているように、M-1という格式高い賞レース会場の雰囲気をトップ出番で掴むことは至難の業であることが公平さに欠けるのではないかと常々議論されてきたものです。しかし、それに対する明確な改善案を皆が納得する形で出せるかと言われたら、極めて難しい話でもあります。

今回の笑御籤で令和ロマンがトップバッターを引いた瞬間、多くのお笑いファンは「まずは爪痕を残してくれれば」という気持ちになった人も多かったのではないでしょうか。

しかしそこで1枚上手だったのが令和ロマンです。出番順や空気に合わせて、彼らは決勝にかけるネタを最終決戦と合わせて4つも用意していたというのです。トップバッターになった場合は流石に優勝は二の次で割り切って楽しむことを考えていたとのことですが、既にくるまさんの中ではどのような流れになるかの想定はなされていたというのが恐ろしい限りです。

確かにネタ数の多さゆえ、どのネタを決勝に持っていくのかが想像できなかった二人ではありましたが、そこまでの想定を組んでいるとは思いませんでした。 特に松本さんを始めとした多くの審査員が、他のファイナリストのネタの採点において最後まで令和ロマンとの比較に悩み続けた素振りを見せていたというのは、過去の大会でも見られなかったことであると印象付けられました。

今回の大会の感想としても「後半の盛り上がりに欠けた」というコメントがある程度目立っていますが、それは裏を返せば「トップバッターが空気を掴みすぎた」という令和ロマンの実力の結果なのでしょう。

最終決戦の「町工場」のネタは過去ネタをブラッシュアップしました。1つ1つのくるまさんのボケの間の取り方が長くなっていたのと、後半のライバルからの下りが大きく変わっており、そこからケムリさんのツッコミの破壊力が飛躍的に増したネタで爆笑をさらったのは圧巻でした。

シシガシラ(敗者復活)

ルール改正後の熾烈すぎた敗者復活戦を見事に勝ち上がったシシガシラの二人。 結成初年度から準々決勝に進出するも、そこから決勝に進めず苦戦してきたシシガシラでしたが、今回は敗者復活戦でも観客とカメラワークを完全に味方につけた歌ネタで圧倒的なインパクトを残すことに成功しました。

その勢いで決勝でも爪痕を残すものと思われた中で、二人が選んだネタは「ハゲのコンプライアンス」。これはお笑いファンの中ではシシガシラの代表作とも言われているネタで、いわばシシガシラの「入門編」とも言えるネタです。

二人にとっても自信のあるネタだったはずでしたが、敗者復活戦と同等のインパクトを残すことには残念ながら繋がらず…。シシガシラの中では分かりやすい部類かつ面白いはずのネタが、審査員からはかえって単調に見えてしまったのでしょうか。

シシガシラからハゲネタをとったら何も残らない!!(笑) そこは声を大にして言い続けたいところです。まだまだオリジナリティの強いネタを持っているはずなので、来年も期待したいところです。

さや香

優勝候補と言われる中で見せた1本目の「ホームステイ」、準々決勝・準決勝で見せた自信ネタであったと思いますが、やはりと言ってよい高評価を得ていましたね。 ただ一方で、準決勝の配信を見た上での印象だと「想像よりは会場の爆発が弱い」といった印象も受けました。特に松本さんが「令和ロマンを超えてこなかった」と評価したのは個人的には驚きましたね。

2本目の「見せ算」のネタは「このネタを最終決戦でかけるのか?」と劇場ファンからも密かに噂されていたネタでした。このネタ自体はさや香も強い思い入れがあったようで、

「あの『見せ算』のネタは、ダブルヒガシとコウテイと僕ら3組でずっと毎月ユニットやっていた。コロナで無観客になった時に、お互い見合おうって、他の2組が客席で見てる状態でやっていた。その時にダブルヒガシとコウテイを笑かすために作ったネタ。それが『見せ算』と『からあげ』」

【M-1】さや香「見せ算」誕生の裏に“アツい話” 千鳥・大悟「かっこええ『M-1』したな」 | ORICON NEWS

と、M-1打ち上げの配信の中でもネタが生まれた経緯を語っていました。

「最終決戦に行ければ、(結果はどうであれ)やりたいネタがある」といった旨の発言を新山さんは笑い飯哲夫さんと「やすとものいたって真剣です」の対談の中で語っていましたので、おそらくそれがこのネタであるかと思います。

昨年の決勝のインパクトで「さや香=正統派」と世間からはそう思われ、期待もされていたと思います。私自身もそう思っていたのですが、一方で過去の敗者復活戦で見せた「からあげ」のような独創的なネタを持っている漫才師でもあることを少し忘れていました。

本来さや香自身が一番やりたいネタを一番やりたかった舞台でやることができた。それが結果としてM-1の舞台では評価されなかったとしても、二人にとっては満足のいく結果だったのではないでしょうか。個人的にはこのスタイルも含めてさや香も好きです! その後Xのトレンドでも「見せ算」についての話題がちょくちょく出ているあたり、インパクトを残したのには違いありません!

カベポスター

決勝で披露したのは、準決勝でも強かった「おまじない」のネタ。ネタ中の「ずっゼリ」はXでも一時トレンド入りするほどに話題になりました。

カベポスターのネタは基本的に落ち着いているため、出番順にあまり左右されない印象が私の中でもありました。一方で、この「おまじない」のネタは導入部分が少し長めのネタのため、後半の永見さんのボケの強さを際立たせるのに決勝でどう影響するかも懸念される部分でした。

実際のウケは決して悪くはなかったものの、やはり多くが惜しんでいるのは大オチの浜田さん…。(笑)浜田さんがあそこまで変に噛んでしまうのも珍しい。数日前にオチを変えたが故に上手く言えるかのプレッシャーがあった旨をM-1打ち上げでも話しており、後味悪めの結果になってしまいました。とはいえ、ネクストデイで放送されていた浜田さんが噛んだ瞬間の会場の一体となった笑いも、ある意味では大会の名場面でしたね。

関西の賞レースは既に十分すぎる実績を残している二人。残すはM-1のみ、といった現状の中で決勝では足踏みしている状況ですが、引き続き来年も決勝進出を期待しています。

マユリカ

結果こそ4位でしたが、マユリカらしさが存分に出た漫才をM-1で見ることができたのが何よりです。

中谷さんが女性役のコント漫才は何種類かあるはずですが、中谷さんがキレながらツッコむ今回の浮気ネタは準決勝とはまた違ったネタ。それでもマユリカの中でも強力なネタであることには変わりないので、他の組が苦戦続きだった中ではかなり善戦していたと思います。

「ずっとキモダチ」は単純ながら二人を表す会心のキャッチコピーだと思いました。今回を機に東京での地上波露出は増えていくことでしょう。二人のキャラクターがより知られることで生まれる強いネタに来年以降も期待したいものです。

ヤーレンズ

今回の結果で一躍株を上げたのはなんといってもヤーレンズ。楢原さんのようなちょいウザなボケが連発するコント漫才は、意外とここ最近のM-1決勝では見られなかったタイプの漫才でした。

「全ボケが誰かしらにハマっている」とM-1の舞台で漫才を評価されたのは、来年のブレイクのためには十分すぎる評価でしょう。

2本目の「ラーメン屋」のネタは昨年敗者復活戦で披露したネタをブラッシュアップしたものでした。昨年の時点でもクオリティの高いネタではありましたが、より互いの所作を引き立たたせる掛け合いの連続が大きな笑いを呼んでいたのは感動でした。

非吉本芸人のファイナリストの中でも、ヤーレンズは元々5upよしもとからデビューしたのもあって、金属バットやDr.ハインリッヒなど、関西の吉本芸人からもその活躍を期待されていました。今後は関西でも、ぜひライブ増やしていただきたいものです!

真空ジェシカ

準決勝敗退を経験せず、3年連続での決勝進出はオズワルド以来。堂々とした印象も感じられた中で披露したのは準決勝と同じく「B画館」ネタでしたが、惜しくもトップ3の牙城を崩すには至らず。
二人のキャラクターも認知されつつある中で、ブレない漫才スタイルからの更なる発展を審査員からも期待されていたのかもしれません。現に審査員の松本さんは真空ジェシカがトップ3に入らなかったことに驚く様子も見せていました。
「老害にはなりたくない」とガクさんは決勝進出決定直後のインタビューで語っていましたが、年々上がっているであろうハードルに答え続けてきたのが真空ジェシカ。
ラストイヤーまであと3年、どういった変化を来年以降見せていくのかが注目されます。

ダンビラムーチョ

著名人の三連単予想では期待する声も多く見られたダンビラムーチョ。前評判とインタビューからもあったように、あくまで自分たちの漫才を楽しくやることに専念した姿勢はダンビラムーチョらしさ満点でした。
しかしながら、準決勝で爆発したはずの歌ネタがあまり評価されなかったのがM-1の雰囲気ならでは。大原さんの独特の音付けがクセになるネタのインパクトは、劇場であれば本来抜群のウケのはず。
あと、見る人によっては、また漫才か否かの論争の的になってしまいそうなネタでしたが、ダンビラムーチョにはその軸はブレてほしくはないなぁと個人的には思います。楽しそうにやるネタこそがダンビラムーチョだと思いますので…。
懲りずにオリジナリティのあるネタで勝負し続けてほしいものです。

くらげ

M-1フリークの間でも隠れた実力者として名前が挙がり続けていたくらげ。世間的にはダークホース的な位置づけだったコンビですが、残念ながら前評判を大きく覆すほどの結果には至らず。一方でサンリオなどの公式アカウントが反応を示してくれたのが、せめてもの救いでしょうか。

SNS上ではなんだか「ミルクボーイっぽい」と言われています。「〇〇が思い出せない=ミルクボーイ」という構図が出来上がってしまうほどにミルクボーイの影響力の凄まじさを思い知らされます。個人的にはあのネタを最初に劇場で見たときは強いシステムだと思っていたので、全くそうは思っていなかったのですが、難しいものですね…。

ダサめビジュアルの渡辺さんから繰り出されるらしくないワードの連発が準決勝では大いにハマっていたのですが…。くらげはとにかく構成の練られた漫才スタイルを量産できるというのが強みですので、2本目にどんなネタを持っていくのかが見てみたかったです。

モグライダー

2年前とは違い、それぞれのキャラクターが認知された状況で今大会を迎えた二人。良い意味で漫才スタイルを変えず、以前披露した「さそり座の女」のネタとはまた異なったテイストの歌ネタで勝負しました。
しかしながら、令和ロマンを皮切りに盛り上がった前半に対し、後半の雰囲気が重く感じられた部分も影響したのか、想定ほどの得点を獲得するには至りませんでした。
ともしげさんのアドリブと芝さんの対応力、どちらも他の漫才師にない個性に委ねられる漫才スタイルだからこそ、伸るか反るかの勝負になるのもある意味モグライダーの魅力かもしれませんね。 
来年はラストイヤー。TVでの活躍も見せ続ける中で高いクオリティのネタを作り続けるのは難しい中かと思いますが、モグライダーならまたリベンジができるはず。

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